非荷重が与える身体への影響

関節拘縮はギプス固定などで関節を動かさない場合によく起こるとされていますが、足を骨折するとギプス固定+非荷重を伴う場合があります。

また、寝たきりの方は関節運動は起こらず下半身への荷重が起こらないため足を骨折した場合と同じような状況になります。

今回は、マウスの後肢を懸垂させて非荷重状態で行った実験ではどのような影響があったのかまとめていきます。

骨に及ぼす影響

骨は重力下において体を支えていることは言うまでもないと思いますが、下肢の骨は上肢の骨に比べて荷重での影響を受けやすいです。

マウスを用いて4週間の非荷重を行った結果、骨密度や骨量の減少、骨強度を減少させることが明らかとなっています。

この結果から、体重を支えている骨は非荷重が原因で骨の萎縮や強度の低下が引き起こすと言えます。

骨格筋の構造に及ぼす影響

骨格筋は筋活動を起こすことによって関節運動を生じさせている器官で、筋発揮の強さは筋の横断面積に比例すると言われています。

成人健常男女8名を2週間ベットに寝た状態での筋厚を測定した結果より、上肢の筋肉への影響は少なく、下肢の筋肉に影響を及ぼすことが明らかとなっています。

また、マウスのヒラメ筋においては筋線維の断面積を減少させ、コラーゲンの割合は増加します。

コラーゲン生成に関与するTGF-βも上昇させる研究結果もあるため、非荷重は骨格筋の筋萎縮を起こしコラーゲン量を増加させるため、筋性拘縮の発生に影響を与えます。

骨格筋の活動への影響

骨格筋は活動電位によって張力を生じます。

この際に起こる活動電位は筋電図によって検出され、筋活動の強さに比例して筋電図上の電位も上昇します。

マウスの研究によると、非荷重ですと筋活動を減少させることがわかっています。

しかし、面白いことに2週間非荷重を続けたマウスのヒラメ筋の活動量を見てみると、非荷重9日目には実験開始前と同じくらいまで回復しました。

このことから、非荷重は最初1週間は活動量を減少させますが、その後は非荷重状態でも回復する傾向にあると言われています。

関節拘縮に及ぼす影響

非荷重はコラーゲンの増加を引き起こすため、関節拘縮の原因となります。

マウスを用いて関節固定のグループと関節固定+非荷重のグループで足関節背屈角度を調査した結果より、非荷重は関節固定によって生じる関節拘縮を悪化させることがわかっています。

しかし、非荷重のみでは関節拘縮は発生しなかったため、関節固定は必要条件であり非荷重は悪化させる要因の一つとして考えられます。

また、非荷重においては、筋の伸張性低下を悪化させ、関節固定と組み合わせることによって、骨格筋のコラーゲン増加だけでなく走行も変化させる可能性もあります。

 

非荷重は、関節固定と一緒に行うことによって関節拘縮を悪化させますので、できるだけ早く動かすべきだと考えます。

 

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