脊柱の疾患にはさまざまなものがありますが、その中の1つに「後縦靱帯骨化症(OPLL)」という疾患があります。
発症頻度は低いものになりますが、難病で国の特定疾患にも指定されていて、治療費が助成されています。
単一の原因で生じるのではなく複数の要因が関与して発症。
後縦靱帯骨化症(OPLL)とは、椎体骨の後縁を上下に連結し、背骨の中を縦に走る後縦靭帯が骨化(骨に変性)した結果、脊髄の入っている脊柱管が狭くなり、脊髄や脊髄から分枝する神経根が圧迫されて、手や足・体幹の痛み・しびれなどの感覚障害や運動障害等の神経症状を引き起こす疾患です。
しかし、レントゲン写真で骨化が見つかったからといって、必ずしも全てに症状がでるわけではなく、実際に症状が出現するのは一部だといわれています。
骨化を起こしている脊柱の部位によって、それぞれ「頚椎後縦靭帯骨化症」「胸椎後縦靭帯骨化症」「腰痛後縦靭帯骨化症」と呼ばれています。
原因は不明だとされていますが、単一の原因で生じるのではなく複数の要因が関与して発症するのではないかと考えられています。
この疾患に関係していると考えられるものとして、遺伝的素因、性ホルモンの異常、カルシウム・ビタミンDの代謝異常、糖尿病、肥満傾向、老化現象、全身的な骨化傾向、骨化部位における局所ストレス、その部位の椎間板脱出など、さまざまな要因が考えられていますが、原因の特定には至っていません。
現在のところ、特に家族内の発症例が多いことから遺伝子の関連が有力視されています。
男性よりも女性に多くみられ、多くは下肢の脱力やしびれに始まる。
胸椎後縦靭帯骨化症を例にみてみると、症状としては体幹や下半身に症状がでます。
男性よりも女性に多くみられ、多くは下肢の脱力やしびれに始まり、進行して重症化すると歩行困難や排尿・排便の障害が出現することもあります。
また、その他の脊椎の靭帯骨化を併発する場合も多く、狭窄の程度が悪化したり、上半身の動きが制限されることもあります。
すべての症例が悪化するわけではなく、半数以上は数年経過しても症状は変化しないといわれていますが、一部の症例においては、次第に神経障害がひどくなり、進行性の場合は手術が必要になることもあります。
生涯にわたって定期的な画像検査を受けることが必要。
治療は、保存療法と手術療法がありますが、手先の細かい動作が困難になったり排尿障害や歩行障害など、脊髄症状が現れるような場合は保存療法では改善されないことが多く、手術療法の適応となります。
保存療法では、骨化によって圧迫されている神経を保護することが治療の主な目的となり、薬物療法では消炎鎮痛剤や筋肉弛緩剤の内服で自覚症状の軽減が得られることがあります。
症状が重度の場合には手術療法を行いますが、骨化の状態や部位に応じてさまざまな手術方法があり、神経を圧迫している骨化した部位を摘出して、その部位を自分の骨などで固定する前方法や、骨化した部位はそのままにして神経の入っている脊柱管を拡げる後方法などがあります。
また、手術によって症状が改善しても、数年〜10年程度経過すると、同部位または他の部位の骨化が大きくなり、再度症状が再発することがあります。
そのため、生涯にわたって定期的な画像検査を受けることが必要になるといえます。