疲労と損傷

運動は筋肉や腱、血管など運動器の改善が報告されていますが、過度な運動は倦怠感や運動器の痛みなどを誘発し、パフォーマンスのみならず生活の質も低下させてしまいます。

運動をせっかく始める気になっても、疲れが溜まりすぎたり、どこか怪我をしたりすると運動離れの原因となってしまいます。

また、疲労が溜まった状態で運動やスポーツを行なってしまうとパフォーマンスの低下や怪我の原因となります。

疲労と損傷はどちらも体に悪影響を及ぼしますがどのような違いがあるのでしょうか

損傷・疲労とは

損傷と聞きますと、肉離れなどを想像すると思いますが、実は筋肉痛もこの分類に入ります。

筋肉痛は慢性的な骨格筋の微細損傷であり、久しぶりに運動を行ったあとや、強度を上げてトレーニングを行った後に発症しやすいです。

損傷は微細損傷ではありますが、ある研究によると軽度な損傷はバランス能力やスプリント・アジリティ・ジャンプ力などが一時的に低下すると言われています。

これは損傷によってアクチン・ミオシンフィラメントが破綻し、普段の力が出せないことが原因で生じます。

ですので、損傷とは「アクチン・ミオシンフィラメントの破綻により、身体活動基準が低下する現象」と言えます。

疲労には身体的疲労や精神的疲労などありますが、「筋損傷を伴わない様々な要因が複雑に絡み合って、身体活動基準が低下した現象」と言えます。

疲労と損傷はどちらも不調が生じ、身体活動基準が低下するため判断が難しいですが、回復時間に差が生じることが報告されています。

回復時間の差

疲労と損傷の回復時間の差として、疲労では運動後一時的に筋力・関節可動域の低下が見られますが、翌日までには元のレベルにまで回復するとされています。

それに対して損傷は、こちらも運動後筋力・関節可動域の低下が見られますが、運動終了後4日後までこの症状が続くとされています。

筋力低下で考えた時に、疲労によって起こる要因として①神経筋伝達機構の疲労②細胞膜興奮機構の疲労③細胞内情報伝達系の疲労④アクチン・ミオシンフィラメントの疲労⑤エネルギー産生機構の疲労⑥代謝産物処理系の疲労の6つがあります。

損傷は前述したようにアクチン・ミオシンフィラメントの破綻によって生じます。

疲労によって起こる要因はどれも運動終了翌日には筋力低下に影響を与えないとされており、損傷は筋自体が回復しない限り筋力低下が生じているため、回復に差が生じます。

 

疲労と損傷の予防や処置としては、例えばサッカーの試合中の明らかなパフォーマンス低下が見られる際、疲労によっての低下でしたら栄養補給が必要ですし、損傷によっての低下でしたら炎症・悪化を抑えるためのアイシングを行う必要があります。

疲労していると損傷が生じやすい状態になりますので自分で体の状態を判断し損傷にならないよう注意しましょう。

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