固有受容性神経筋促通法(PNF)を用いたトレーニングについて考える|フィジオ福岡 トレーニングアプローチ

固有受容性神経筋促通法(Proprioceptive Neuromuscular Facilitation:以下PNF)では、一側の運動において拮抗筋の収縮後に主動筋を収縮させることで筋力を効率良く発揮させる手技のことをいいます。
この手技は、イギリスの生理学者であるSherringtonの継時誘導が理論的根拠とされて構築されています。

Sherringtonが提唱する筋活動量における継時誘導の効果に関する先行研究はいくつか報告されています。
その一方、臨床で筋力向上や協調性の改善を目的にPNFを行う場合、目的とする一側のみの運動だけでなく反対側の運動や両側での運動も行われています。
この方法はPNFの促通要素のひとつである「irradiation」(以下、発散)の効果を期待したものになります。
この「発散」現象とは、刺激に対する反応が拡大した状態であり、運動に抵抗を加えることで神経インパルスの発散が生じ、筋活動の拡がりが得られることを指しています。

例えばPNFの研究では、両側性運動の先行研究には、一側の運動スキルの学習が対側の運動スキルを向上させるという質的な研究や、一側のトレーニングが対側の筋力をも増強させるという量的な研究まで幅広く報告されています。
筋力増強作用に対する見解として、これまで対側同名筋に対する特異的効果とする意見や、最大随意収縮(Maximum Voluntary Contraction:MVC)による対側肢への神経インパルスの発散的筋活動、姿勢固定のための筋 収縮などと、いくつかの解釈が考えられています。

一方で、一側のトレーニング効果とは逆に、両側同時に筋力を発揮すると一側で筋力を発揮するより筋出力量が低下するという報告も存在します。
この現象は、両側同時に筋力を発揮すると片側のみの筋力発揮に比べ筋出力量が低下する両側性機能低下 (Bilateraldeficit:BLD)という現象として報告されています。
この「両側性機能低下(BLD)」のメカニズムには、脊髄・末梢性レベルや心理・中枢性レベルなど様々な観点で報告されています。

基本的にPNFの運動パターンは、対角線かつ螺旋(回旋)状の運動であり、複合面上で行われる特異的な運動パターンになります。
他の運動療法アプローチではPNFのように複合面上でアプローチするものは少なく、矢状面の動きや前額面の動きに対して単一面上でのアプロ ーチが多いのが実際です。
しかし、人の力強い粗大運動を観察すると、対角線上の動きと回旋の動きが加わっていて、矢状面・前額面あるいは水平面のような単一な基本面上の動きはきわめて少ないと言えます。
代表的なPNFの中では、「ホールド・リラックステクニック」や「コントラクト・リラックステクニック」といった方法がありますが、現場で行われるものの多くが実は単関節に対する単一面上で行われているケースがほとんどになります。
しかしながら、PNFの研究において複合面上での運動パターンに対するアプローチの有効性を示唆している報告も多く、PNFを行う場合は「回旋筋を伴う運動療法」としてのアプローチが有効な手段であると考えられます。
PNFを行う際は、少し股関節や肩関節における複合面で行う回旋状の運動を踏まえた「ホールド・リラックステクニック」や「コントラクト・リラックステクニック」を行ってみるといいのかもしれません。

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