筋腱複合体とプライオメトリクス|フィジオ福岡 プライオメトリクスの理論

人間の身体は、脳からの指令によって筋肉が収縮し、骨を動かす仕組みになっていますが、その骨と筋肉の接合部は、腱を介して付着しています。筋肉は、1本1本の細い筋線維からなり、それが束ねられ筋束になり、さらにそれが集められたものを筋腹と呼んでいます。また、筋腹と腱のつなぎ目を筋腱接合部といい、筋腹と腱をつなぎ合わせた全体を筋腱複合体といいます。

弾性エネルギーを利用するためのトレーニング

筋と腱は、それぞれ別に働くのではなく、連携しています。例えば、外部からの力が加わったとき、筋は力に応じて収縮・伸張しますが、腱は加わった力を一時的に蓄え、伸張されると強い力で短縮するという性質を持っています。この両者の性質を合わせて筋腱相互作用といい、身体運動を理解する上で、重要な概念になっています。ふくらはぎとアキレス腱が典型的な筋腱複合体です。

連続してジャンプを行うとき、接地時にはふくらはぎとアキレス腱の筋腱複合体が伸ばされます。その時、下腿三頭筋を緊張させておくと、その分アキレス腱が伸ばされ、そのアキレス腱が短縮する力が有効に使われると効率よくホッピングができます。筋腱複合体が、いわゆるバネのように働いています。これは、身体の落下エネルギーの一部が、一時的にアキレス腱に蓄えられ、放出されたとも言えます。

筋力トレーニング、ストレッチなどでは、それぞれの課題が筋腱複合体にどう影響するかを考えて組み立てることがポイントになります。特に、ランニングやジャンプでは、筋腱相互作用をより有効に活かせば、より大きい力を生み出したり、より少ないエネルギーで走ったりすることが可能になります。この、筋腱複合体の相互作用を有効活用し、その弾性エネルギーを利用するためのトレーニングがプライオメトリクスです。

プライオメトリクスエクササイズにおいて力の増加理論

プライオメトリクスエクササイズにおいて力の増加の理論は大きく分けて3つあります。

第1の理論としては、主動筋を急速に伸張すれば筋紡錘を活性化し、錘内筋線維核鎖線維と包鎖線維に関連したⅠa感覚ニューロンの発射率増加を引き起こすという原理。
Ⅰa感覚ニューロンの発射の増加は、主動筋と単シナプスの脊髄反射路におけるα運動ニューロンの発射の増加を生じさせ、筋収縮力の増加につながります。

第2の理論としては、伸張に対するゴルジ腱器官の感受性の減少のよるもの。筋腱に存在するゴルジ腱器官は、筋の緊張によって活性化されます。緊張が筋肉にダメージを与えるレベルに達した時、ゴルジ腱器官は主動筋の力の生産抑制による保護システムを備えているのです。プライオメトリクスエクササイズはゴルジ腱器官の感度を弱めるとも考えられており、主動筋の抑制を排除し、最終的に力の生産の増加をもたらすということもいえるでしょう。

第3の理論としては、神経系の順応を基盤としています。
この件については運動学の文献では、「認識から無意識に進むことにより新しい技術を獲得する」と述べられています。たとえば、ジャンプパフォーマンスの技術は、運動のパターンが習得されるにつれて改善され、トレーニングをすれば効率が上がり、パフォーマンスの改善につながります。ジャンプトレーニングにおいては、遠心性と求心性位相関の時間遅延を減少し、蓄積された弾性エネルギーの戻りを増加させることになります。これは筋の断面積の変化がないときでさえ、トレーニング後のパフォーマンスの改善がみられたとする研究も存在します。またプライオメトリクスエクササイズは遠心性から求心性収縮への移行を最小限にすることでリバウンドの時間を改善し、神経インパルスと筋収縮の反応時間を減少させ、より多くの運動単位を動員させるという報告もあります。

この3つの理由により、プライオメトリクスの力の増加が起こる理論とされています。

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