有酸素運動の特徴は、ミトコンドリアの多いタイプI・タイプIIa筋線維を増やし、心肺機能を高めることにあります。
サルコペニアでは、これらのタイプの筋線維数が増加するので有酸素運動にサルコペニア予防効果が期待されています。
実際、介入研究においても、高齢者で有酸素運動を行うと筋力や筋肉量が増加することが報告されています。
しかしながら、ある研究においては筋肉量の増大が認められなかった例もあります。
有酸素運動により、若年者も高齢者(60歳以上)も筋力の増加と最大酸素摂取量の増加は認められていますが、CTで測定した下肢の筋肉量は変化していなかったという報告があります。
また、加齢に伴い走行スピードが遅くなり、その原因として下肢筋肉量の減少(筋萎縮)に伴う歩幅の減少と地面への接触時間の増加が起こっているという報告もあります。
また加齢による下肢筋力の低下は70歳までは認められないが、除脂肪体重あたりでは下肢筋力は低下し、筋機能の低下が起こっているという報告もあります。
このように、加齢による筋萎縮は有酸素運動では防ぐことはできないが、遅らせることは可能であると考えられています。
「PGC-1α」はミトコンドリアの生合成にかかわる主要な転写共役因子になります。
「PGC-1α」は有酸素運動や寒冷刺激などエネルギー代謝が増加する時に発現量が増加し、ミトコンドリアの活性や数の微調整を行う転写共役因子と考えらています。
更に「PGC-1α」は脂肪酸燃焼の増加や毛細血管新生にも関与し、広くエネルギー代謝に影響を与えています。
また「PGC-1αmRNA」には同じ遺伝子から転写される3つのアイソフォーム(a,b,c)が存在し、異なる役割を持っています。
以前から報告された「PGC-1α-a」はユビキタスに発現し、絶食により肝臓で増加し糖新生を亢進させます。
「PGC-1α-b」、「PGC-1α-c」は筋肉(骨格筋、心筋)や褐色脂肪組織に発現し、運動・交感神経の刺激で発現量が著明に増加しミトコンドリア合成亢進、脂肪酸酸化亢進、毛細血管新生などエネルギー消費量増加に関与しています。
運動によって増加する「PGC-1α-b」の過剰発現マウスが最近解析され、最大酸素摂取量が増加し運動能力が良くなることが示されました。
しかし、筋線維の肥大化は生じないことから,「PGC-1α-b」以外の機序が考えられています。