近年トレーニングをしていても体幹機能というものが非常に重要なものであるということは広く知られてきました。
体幹は四肢が機能するための土台となる部分です。
この土台である体幹機能が低下すると、上下肢機能が低下するとも言われています。
一般的に建物の土台に求められるのは強固な支持性になりますが、ヒトのカラダでの土台、体幹に求められるのは身体内外の変化に柔軟に対応することができる「動的安定性」になります。
ここでいう「動的安定性」は、①骨、靱帯、関節 ②筋 ③神経系の3つの相互作用によって保たれているのです。
骨・靱帯・関節。筋、神経系。この3者がシステムとして機能することでこの文節構造を安定させている。
体幹は分節構造からなり、個々の分節は前方に位置する椎間板と後方に位置する左右2つの椎間関節で連結され、機能的単位を形成しています。
たとえば、棘間靱帯や棘上靱帯などの靱帯組織が機能的単位を補強し、筋が機能的単位を動かし、神経系がこれらの他動組織や自動組織からの情報を得ながら自動組織を制御しているということです。
このようにうまくこの3者がシステムとして機能することでこの文節構造を安定させているともいえると思います。
体幹の動的安定性はこのグローバル筋、ローカル筋、両者の筋群の機能に依存する。
この3者の中でも、唯一の自動組織である筋は、表在に位置して多分節に関与するグローバル筋群と深部に位置して一つの分節に関与するローカル筋群に分けられます。
体幹の安定性とはよくいいますが、体幹の動的安定性はこのグローバル筋、ローカル筋、両者の筋群の機能に依存するところがあります。
なぜなら体幹の中でも腰椎骨盤領域には大きな力が加わるために、その大きな負荷に対抗するための大きな筋力が要求されることになります。
このような負荷に対しては腹直筋や腹斜筋群、脊柱伸筋群からなるグローバル筋群が関与しています。
これらの筋群は脊柱全体の剛性を高めることができますが、個々の分節の動的安定性は腹横筋や深部多裂筋などのローカル筋群の機能に依存しているのです。
従来のトレーニングでは腹直筋、内腹斜筋、外腹斜筋、脊柱伸筋群などの体幹筋の筋力トレーニングにより、筋コルセットを形成し脊柱の安定性を高めようとする方法が考えられてきましたが、昨今の研究でこのようなグローバル筋群に対するアプローチのみでは、脊柱の個々の分節を安定化させることはできないことがわかってきています。
だからこそ真の体幹分節の動的安定性を得るためには個々の分節のコントロールを高めることが重要であり、グローバル筋ばかりではなくローカル筋に対するアプローチが必要となるというわけです。