前回、膝蓋骨不安定症の概要を書きました。
今回は、診断と治療について書いていきます。
膝関節伸展位で、膝蓋骨を徒手的に外側に動かすと「脱臼しそうな不安感」を訴えます。症状の強い例では、膝関節を自身でゆっくり屈伸させながら膝蓋骨の動きを確認すると、膝蓋骨が外側方向に亜脱臼したり整復されたりするのが確認されることがあります。また、関節面に繰り返し負荷が加わって軟骨面の変性が進んだ症例では、関節表面が不整化していて、膝蓋骨を圧迫しながら大腿骨上を動かすと疼痛や轢音を生じます。炎症所見が強い場合や軟骨変性が著しい場合では関節水症も認めることがあります。X線検査では、膝蓋骨軸射像で、安静時でも膝蓋骨が外方に変位していることが多いですが、安静時には膝蓋骨が正常の位置にあり、負荷が加わったときだけ亜脱臼する症例もあります。また、一定の膝関節屈曲角度だけ膝蓋骨の外方への亜脱臼を認める症例もあるので、膝蓋骨の軸射像は30°・60°・90°などさまざまな角度で撮影します。亜脱臼を繰り返し、関節軟骨の変性が進んだ症例では、単純X線やMRIで膝蓋大腿関節面の不整化を認めます。
治療は、膝蓋大腿関節の異常可動性がこの疾患の病態であり、スポーツ活動にあたっては膝蓋大腿関節の不安定症を生じないようにすることが治療の原則になります。骨の形態や腱の付着部位などの解剖学的要因を変えることはできないので、膝蓋大腿関節の安定性を増やす方法としては大腿四頭筋の筋力強化になります。亜脱臼を繰り返し、炎症が強い場合には競技レベルを落とし、運動後はアイシングなどで炎症の鎮静化を図ります。不安感が強く、スポーツの継続ができない場合には、膝蓋骨の外側への異常可動性を制動している内側膝蓋大腿靭帯の再建術などの手術的治療が行われることもあります。