肘関節脱臼は転倒時・落下時に手をついて損傷することが多いです。
肘関節脱臼には2つの脱臼パターンがあり、それぞれ損傷組織が異なります。
1:過伸展型損傷(後方脱臼)
肘を伸ばしたまま手をついた際、肘が過伸展し、肘頭が肘頭窩に衝突してテコとなり、鉤状突起が上腕骨滑車を乗り越え、肘関節(尺骨)が後方に脱臼します。
損傷部位はMCLの他に、前方関節包や円回内筋が高率で、外側側副靱帯にも損傷が見られる場合があります。
2:後外側脱臼
肘軽度屈曲位で身体より前に手をついた際、身体の軸圧の方向が前腕より内側となります。
加えて前腕回外位であると上腕骨が内旋しながら橈骨頭前方に滑り、肘が回外・外反強制され、後外方に脱臼します。
症状として受傷直後は、著名な可動域制限と肘周囲の腫脹・疼痛・前腕部の内出血、整復前は明らかな変形が特徴的になります。
受傷1〜2週後(固定オフ後)には安静時痛がほぼ消失しますが、運動時痛と腫脹による可動域制限はまだ著名に見られ、外反または内反あるいは両方の不安定性が残存する場合があります。
治療としては、第1選択は保存療法であり、観血的療法の適応は限られます。
脱臼の整復が困難なものや、整復後30〜45°以上の伸展制限をつけなければ、再脱臼するもの、鉤状突起や橈骨頭骨折の転位が大きいものには、観血的療法が行われます。