睡眠を十分取ると身長が伸びると言いますが、これはある程度正しいといわれています。
それは睡眠中に成長ホルモンがたくさん分泌されるからです。
ではなぜ寝ている間に成長ホルモンがたくさん分泌されるのか。
寝ている間は食べることができないため、どうしても血糖が下がりぎみになります。これを放っておくと脳が低血糖になって昏睡に至り二度と起き上がれなくなる危険性すらあります。
成長ホルモンは、この低血糖の危機を乗り越えるために寝ている間にたくさん分泌されるとされています。
成長ホルモンの大切な作用
成長ホルモンには長期的にIGF-1の分泌を促して、成長を促進する他にもう一つ大切な作用があります。
それは短期的に血糖を上げる作用。
肝臓に蓄えられているブドウ糖がいくつも繋がったグリコーゲンを分解してブドウ糖を作り、また脂肪組織から中性脂肪を分解してエネルギー源を作り出す作用を担っています。
生まれた人間の赤ちゃんは成長の過程で脳がどんどん発達していきますので、そのために莫大なエネルギーが必要です。
例えば5歳以下の子供は脳が機能するために基礎代謝エネルギーの40%から85%を消費するといわれています。
これ、大人の場合は16%から25%ともいわれるのでかなり大きな数字です。
それだけ赤ちゃんの脳はたくさんの糖分が必要ということ。
だからこそ赤ちゃんでは、特に寝ている間に低血糖になる危険性が大きいとされています。
育ち盛りの時には体を成長させるためにも、また脳が低血糖に陥って知能低下にならないようにするためにも成長ホルモンはどうしても必要なのです。
だからこそ寝ている子供ではたくさんの成長ホルモンが分泌されるということ。
こうして「寝る子は育つ」ということが成り立ちます。
睡眠不足と肥満
一方で就寝時間が遅い子供は太りやすいとされています。
当たり前ですが、寝る時間が遅い子供はどうしても寝不足になり朝起きるのが遅くなります。
そうすると朝ごはんを抜きにする欠食が多くなります。
さらにこうした家族では一人でご飯を食べる孤食の傾向も往々にして見られ、このような子供の食習慣の乱れが肥満を生じさせるといわれています。
成長ホルモンのことから説明しても寝ない子は太ることは十分説明がつきます。
睡眠時間が短くなり、成長ホルモンが足りなくなると脂肪が燃焼しにくくなるのです。
この現象は大人になってからも問題です。
成長が終わった大人になってからでも、成長ホルモンが少なくなるとメタボ型の体型になりやすくなります。
やる気が出ない、精力減退などを訴える方もいるし、狭心症など血管病変にもかかりやすくなります。
こうした状態は「成人成長ホルモン分泌不全症」として最近注目されています。
成長ホルモンは多すぎると短命になってしまいますが、少なすぎてもまた別の問題を引き起こしてしまうのです。
日本人は世界一睡眠の短い人種とされています。
お腹がぽっこり出た中年日本人男性は食生活の乱れだけではなく睡眠不足にも要注意ということがいえるでしょう 。