身体運動における足部は、床面との接触時の衝撃の吸収、推進力を得るためのプッシュオフなどの複数の機能を果たすために必要に応じてその特性を変化させています。
力学的には骨・靭帯によるアーチ構造と、足部内在筋・外在筋の働きのバランスでこの要求に応えており、足部機能性の指標として静止立位での内側縦アーチ高率がよく用いられます。
実際にアーチの高さというのは、ハイアーチ、あるいは扁平足などとよく話になりますよね。
しかしながら、アーチ構造の「機能」状態を知るためにはそれが必要とされる動的状態で評価するのが本来望ましいものになります。
足関節回りのスティフネスへの貢献から下腿筋とアキレス腱の機能に注目が集まっている。
足部は、床反力に起因する運動エネルギーを弾性エネルギーに変換します。
腱・靭帯などの軟部組織自らがスティッフネスを変えることができない組織に加え、収縮によりスティッフネスを変化させることのできる筋肉との2つにより変位・力関数が構成されているため、ここでの足部スティフネスは見た目としての側面よりは機能的なスティフネスの視点で考えられるものになります。
様々な文献に目を通してみると、足部を剛体とみなした状態でみると、足関節回りのスティフネスへの貢献から下腿筋とアキレス腱の機能が重要という報告をよく目にします。
しかしながら、身体で発生させた運動エネルギーを床面に伝える連鎖の最終段階である足部そのもののスティフネスがパフォーマンスに影響をあたえることは想像に容易いものです。
足部筋機能への効果的アプローチにより動的足部機能を回復できる可能性がある。
走る・跳ぶなどを含む運動課題に高いパフォーマンスを要求されるアスリートには、短時間に大きなエネルギーを発揮できるパワーが要求され、それに対応できる足部の機能が必要です。
そのように考えると、動的な足部スティフネスの評価は、非常に重要なものではないかと考えています。
足部への床反力負荷が最大となる踵離床直後では、MP関節の背屈角度が小さくなり足底内側縦アーチの挙上に大きな役割を果たすと考えられている足底腱膜のWindlass機構は有効に機能しません。
そのため、動的足部機能の維持のためには足底腱膜のWindlass機構ではなく、足部外在筋の役割が重要になります。
このように運動リズムの変化によって、足部スティフネスが変化することは動的足部機能に対する筋力の貢献を示唆するものであり、トレーニングやリハビリテーションにおいて足部内在筋・外在筋機能への効果的なアプローチができれば動的足部機能を回復できる可能性があることも示唆されています。
足関節回りだけではなく、足部そのものにもしっかりと着目して評価することが重要です。