関節拘縮に対する皮膚・筋へのストレッチ効果

関節拘縮にはストレッチが良いと前回の投稿で書きましたが、ストレッチといっても皮膚を伸ばすか筋を伸ばすかという方法があり、関節を動かさなければいけないか動かさなくても良いという差があります。

どちらも関節拘縮に影響を及ぼすのでしょうか?

皮膚ストレッチ

皮膚ストレッチは関節を動かさなくても行うことができるため、骨折で関節が動かせない人に対しても行えます。

そもそも皮膚は体重の約16%を占めるほどの臓器で、表皮、真皮、皮下組織の三層構造で構成されています。

皮膚は軟部組織性の関節拘縮の原因の一つとされていて、火傷・創傷・炎症に起因します。

関節を固定すると当然関節拘縮は起こりますが、皮膚への影響として表皮の厚さが薄くなることがわかっているため、皮膚の組織学的な変化を引き起こします。

皮膚へのストレッチとして、ティシューエキスパンション法を用いた実験によると、皮膚の張力が増加するとされていますが、実施期間によって変化します。

32日以上のストレッチは可動域制限因子としての影響を小さくするとされているため、32日以上行います。

徒手によるストレッチの実験としてはまだあまり研究されていませんが、マウスを足関節最大底屈位で固定した群と底屈位で保持したまま長軸方向へと30分牽引する群の1週間後の皮膚を測定するものがあります。

その結果、牽引した群の方が皮膚の柔軟性が向上しました。

このことから、ティシューエキスパンション法では皮膚を拡大するため可動域を拡大しますが、徒手ストレッチでは皮膚の柔軟性低下は抑制しますが、関節可動域に影響するかはまだ十分な根拠はありません。

筋ストレッチ

ストレッチが関節拘縮に与える影響として、弱い力で長時間ストレッチを行うと関節可動域改善には効果があります。

2週間の固定の後では体重をかけるだけで、筋の伸張性が改善したが、4週間の固定においては筋の伸張性が改善されなかったとされています。

4週間の固定で改善しなかった理由としては、筋内コラーゲン組織の架橋結合が強化されたからだと考えられます。

また、ストレッチは関節拘縮が起こった骨格筋の損傷を軽減させる可能性があるとされていますが、拘縮が起こった後に毎日ストレッチを行っただけで筋繊維が太くなっていた、すなわち回復していたと言えるので軽減するのではないかと考えられています。

しかし、関節拘縮が起こった筋にストレッチをかけると炎症を引き起こす可能性があるとされています。

このように、関節拘縮時のストレッチは関節可動域や筋線維径の改善は見られますが、炎症反応が引き起こされるとされているので統一された考えが出されていないのが現状です。

 

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