変形性股関節症の前額面でのトレンデンブルグ歩行の主たる原因としては、一般的には股関節外転筋の筋力低下が真っ先に疑われます。
しかしながらこの背後には、股関節の構築学的な問題が存在する場合も多いものです。
従って単に外転筋の筋力低下のみに由来するのではなく、多くの因子が原因となって生じる現象がトレンデンブルグ歩行として表出されていると考える必要があります。
開放運動連鎖(OKC)での筋収縮様式と閉鎖運動連鎖(CKC)の筋収縮様式
例えば、原因の一つとして開放運動連鎖(OKC)での筋収縮様式と閉鎖運動連鎖(CKC)の筋収縮様式が異なることが考えられます。
この現象をもたらす重要な原因は変形性関節症により速筋繊維が減少していると考えられていますが、そのほかにもトルク値立ち上がり時間の遅延があることや外転筋活動量が減少していることなどが考えられます。
これらのことから、外転筋の反応時間が遅延するためにCKCである歩行時の立脚期踵接地時に瞬時かつ十分に筋活動ができないということが大いに考えられるのです。
歩行においては踵接地が起こってから股関節外転筋活動の開始される時期が遅延するということ。
つまりは中殿筋の反応が悪く、うまく骨盤を支えられない、トレンデンブルグの兆候が出てくるという流れになります。
運動連鎖の観点から
運動連鎖の観点からすれば、歩行動作というのは股関節、膝関節、足関節が協調的に運動しているものです。
そのため外転筋活動開始時期の遅延は、膝関節までを含めた下肢全体が筋活動開始時期を遅延させ、相互の筋活動時期に遅延を起こすことも考えられます。
最近では、運動の協調性の改善を目的としたCKCでの訓練の重要性が指摘されています。
仮に変形性の関節症に対してCKCの訓練を多く取り入れることで外転筋活動開始時期の短縮や筋活動協調性の向上を得ることができれば、トレンデンブルグ歩行を改善させる方法としては大いに可能性のあるものかと考えられます。