様々な議論がされているストレッチ。
実際にみなさんが運動する前にカラダの柔軟性を高める為に行っている方は多いかと思います。
では、このストレッチの効果がどれくらいあるのかを知っている方はどれくらいいるのでしょうか?
ストレッチングを行うと、伸張を加えている筋や筋膜といった軟部組織の伸張性が増大し筋柔軟性が増大する。
ストレッチの研究は昔から行われていて、例えば短時間の激しい運動後のストレッチング実施による筋柔軟性低下の予防効果についての研究では、ストレッチングの実施は筋の柔軟性を高め筋疲労による関節可動域の低下を予防する効果があるものと思われると報告されています。
このように、ストレッチングを実施することで、伸張を加えている筋や筋膜といった軟部組織の伸張性が増大し筋柔軟性が増大することは周知の事実となっています。
しかしある研究では、筋疲労による筋柔軟性低下の予防効果については「軽運動」が効果的であり、ストレッチングは大腿直筋においてはあまり効果がなく、ハムストリングスにおいても安静臥位とあまり差がないとの結果を示す論文も存在します。
また、ストレッチングを実施している時に被検者が伸張を加えている筋に疼痛を強く訴え、ストレッチングを避けたいという結果を訴える論文も存在しています。
ストレッチングを実施したものの十分な伸張を加えることができず、筋の柔軟性が低下することもある。
このようなことを踏まえて考えてみましょう。
通常、激しい運動を行うと疲労物質である乳酸が筋肉中や血中に多量に蓄積し、筋肉組織の伸張性が低下し筋疲労が生じて一時的に筋収縮が阻害されることになります。
しかし、乳酸の蓄積は筋の疼痛を生ずる原因ではなく筋の疼痛の原因は発痛物質や発痛増強物質の発生であると考えられます。
この発痛物質の刺激が、侵害受容線維を伝わって脊髄に興奮が送られ、侵害逃避反射が誘発されて当該筋の筋緊張が亢進。
そのためにストレッチングを実施したものの十分な伸張を加えることができず、筋の柔軟性が低下する傾向となったと考えることができるでしょう。
実は短時間の激しい運動後に実施する筋疲労回復処置の疲労回復効果を、血中乳酸値の変化動態によって捉えようとする研究はこれまでにも報告されています。
これらの研究結果は概ね、激運動後の回復期に疲労した筋肉を動かすことが乳酸の消去を促すと報告しています。
激運動後の回復期に適度な運動を行うことによって乳酸消失が加速されるのは、運動によって組織の血流量が増加するため、活動筋からの乳酸の洗い出し、および乳酸処理組織における乳酸の取り込みが増大するためと考えられているからです。
柔軟性の改善と疲労回復ではそもそもの目的の違いがあることを念頭に置くべきである。
激運動や回復期の条件設定は先行研究と異なるところはあるが、軽運動が効果的である傾向がみえます。
そして注目すべきは、ストレッチングについては乳酸の回復には有意な効果をもたらさなかったと報告している論文もあるということです。
筋のクレアチンリン酸量の変化、細胞内のPHの変化を調べ、ストレッチング群はクレアチンリン酸の回復が遅くPHの戻りが悪いという結果となり、「乳酸などの血液中にできた疲労物質は筋のポンピング作用によって除去されるものであり、運動後に伸張を加えることはそれ自体疲労物質を細胞外に出すことにプラスの作用をしていないのではないか」と報告している論文もあります。
これらの研究はストレッチが疲労回復の効果を持つものの証明ではないことがわかります。
むしろ、乳酸の除去に関しては「アクティブレスト」が一番の方法であるとする研究も多いのが実際です。
柔軟性の改善と疲労回復ではそもそもの目的の違いがあることを念頭においた上で、ストレッチに取り組んでいく必要性があります。