トレーニングプログラムをデザインするときには、目的の存在、目的と各要素との関係、各要素の論理的な前後関係が不可欠である。
漠然とした目的でトレーニング計画が不明確なまま、自分の知っている範囲のエクササイズ種目を時々の気分やコンディションにだけ頼って継続していると、一見自然流のいいトレーニングになっていると錯覚することがある。
しかし、その選手にとって最も先に克服すべき重要な要素のトレーニングを欠落させていたり、生理学的にみて両立しがたい課題に同時に取り組んでしまっていたり、効率の悪い順序になっていたり、といった事に気づかず効果が半減したり重要な時期に手遅れとなることもある。
だからこそメニューではなくプログラムが必要となる。
プログラムに含める要素やその時間的配列の検討基準となるのは目的である。
例えば漠然と筋力の向上と言っても、筋力発揮の「部位(筋群)」「筋活動タイプ(コンセントリック、エクセントリック、アイソメトリック)」「姿勢(関節角度とROM)」「抵抗の種類」「速度」そして「時間」にかんする目的が明確でないと、構成要素としてのエクササイズ種目も論理的関係としての負荷強度も明確とならない。
そこでいかに明確な目的を設定するかがまず最初に検討すべき課題となる。
目的設定には「SMARTシステム」という方法がよく利用されている。
これは「Specific(特異的」)、「Measureable(測定可能」)、「Action-oriented(行動志向的)」、「Realistic(現実的)」、「Timed (時期的)」の頭文字を取ったもので、要するに、できるだけ具体的で、努力すれば実現の可能性があり、しかもその成果が明確に目に見えたり実感できる測定可能な目標を、それを達成するために取り組むべき行動をイメージして、それを何時までに達成するのかのタイムリミットを明確にした上で設定すべし、という目的設定のための指針である。
こうしたSMARTな目的設定をすることによって、その後のプログラムの方向性も鮮明となる。
逆にいうと目的が曖昧な限り、どのエクササイズを選択するべきか、強度やセット数は、それを何時までつづけるのかといった基本的なことさえも定まらない。
これではメニューとは言えてもプログラムとは言えないだろう。