下肢の筋力トレーニングを行う場合に考えなければいけないポイントに、脛骨大腿関節と膝蓋大腿関節の応力とその作用する接触部位に対する考慮が非常に重要になっていきます。
例えば、関節の接触部位や応力の大きさの違いは筋力トレーニング時の痛みの出現に関与してくるからです。
応力に影響を与える因子としては、筋の収縮力、関節面の部位、接触面積の広さ、関節の角度、抵抗の位置、収縮速度、収縮様式(等尺性・等張性)、運動様式(CKC・OKC)などが考えられます。
これらの要素をどのように考慮しながらトレーニングを行っていくかが非常に大事なポイントになっていきます。
特に高齢者や術後にみられる廃用性筋萎縮は、筋の固定などによって生じる局所的要因による場合と、全身的な活動性低下が影響している場合とに大別されていきます。
疾患による筋力低下や筋萎縮だけでなく、老化やベッドレスト、術後の回復期などにみられる身体活動量低下によって骨格筋の廃用性筋萎縮が助長されることをまず第一に頭にいれることが重要です。
そのように考えると、廃用性筋萎縮を防止するためには日常生活と同じ程度の筋活動量を下肢筋に与えることが必要不可欠になっていきます。
例えば健康なときは、1万歩歩行していた人が入院すると下肢に入力される刺激量は半分以下に低下し、さらに臥床中は下肢への刺激がほとんどなくなることが予想されます。
この下肢への刺激がない状態で、従来行われている高負荷低頻度の筋力トレーニングを行っても日常生活において十分筋活動が行われている健常人のような効果は得られないことは想像に容易いと思います。
まずは臥床中には筋萎縮の防止のために日常生活と同じ程度の筋活動をトレーニング負荷として加える必要があり、その上で漸進的に負荷量を調整していくことが必要になっていくと考えられます。