肘頭骨折には、成人に多く、小児にはまれな骨折です。
上腕三頭筋の腱膜や肘頭骨膜などの肘伸展機構が有効に働くかどうかは、重力に抗して肘が伸展できるかできないかで判断しますが、これは治療法を決定するうえで大切になってきます。
発生機序としては、直逹外力と介逹外力があります。
直逹外力としては、肘関節屈曲位で肘頭部に強い打撃や衝突を受けたときに発生します。
骨片が2つ以上に割れる粉砕骨折となる時もあります。
介逹外力では、肘関節を過伸展させられ、肘頭が上腕骨遠位端の後面にある肘頭窩と激突して生じます。
上腕三頭筋の牽引力による裂離骨折を見ることがあります。
症状としては、自発痛・圧痛・運動痛は著名で、特に骨折部の限局性圧痛は強いです。
腫脹が骨折部を中心にみられ、波動を触れることもあって裂隙部に橫走する陥凹を触知し、骨片転位のある場合は、近位骨片が後上方に突出し皮膚上から変形として認められます。
肘関節の自動屈曲は可能ですが、自動伸展は制限されます。
後療法としてこの骨折は再転位を起こしやすいので1〜2週間は十分注意する必要があります。
3〜4週間後から副子を調整して肘関節屈曲角度を少しずつ増加させます。
骨癒合に4〜6週間を要するために、肘関節の屈伸運動は骨癒合後より徐々に慎重に行います。