肘関節脱臼

肘関節の脱臼は、転倒や落下時に手をつくことによって損傷することが多くなります。2つの脱臼パターンがあり、それぞれ損傷組織が異なります。

1つ目は、過伸展型損傷(後方脱臼)で、肘を伸ばしたまま手をついた際、肘が過伸展してしまい、肘頭が肘頭窩に衝突してテコになり、鉤状突起が上腕骨滑車を乗り越え、肘関節(尺骨)が後方に脱臼します。損傷部位は、MCLの他、前方関節包や円回内筋が高率で、外側側副靭帯にも損傷がみられる場合があります。

2つ目は、後外側脱臼で、肘が軽度屈曲位で身体より前に手をついた際に、身体の軸圧の方向が前腕よりも内側となります。加えて前腕回外位であると上腕骨が内旋しながら橈骨頭前方にすべり、肘が回外・外反強制され、後外方に脱臼します。過伸展型の後方完全脱臼に比べ、後側方脱臼は臨床現場ではあまりみられません。PLRI(posterolateral rotatory instability)型ともいわれ、LCL・前方関節包・MCLの順に損傷が起こるとされています。

受傷直後は、著名な可動域制限と肘周囲の腫脹・疼痛・前腕部の内出血・整復前は明らかな変形が特徴的になります。1~2週後には安静時痛がほぼ消失しますが、運動時痛と腫脹による可動域制限はまだ著名にみられ、外反または内反あるいは両方の不安定性がみられます。2ヵ月後では、運動時痛や腫脹はほぼ消失し、不安定性が残存する場合があります。

脱臼直後のX線検査によって、脱臼の有無を確認し、整復の前後のX線検査で鉤状突起・橈骨頭・上腕骨内外側上顆の骨折を確認します。MRIや超音波検査にてMCL・LCLの連続性の有無を把握し、前方関節包・円回内筋の損傷の有無を確認します。

治療は、第1に保存療法で、観血的療法の適応は限られます。脱臼の整復が困難なものや、整復後30~45度以上の伸展制限をつけなければ再脱臼するもの、鉤状突起や橈骨頭骨折の転位が大きい場合などには観血的療法が行われます。

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