新生児の姿勢と運動学習

生後まもない新生児の中心的な姿勢は背臥位です。

この物理的に支持基底面が広い背臥位は姿勢に安定性をもたらしていくことになります。

胎児の間は屈曲優位であったことから、伸筋の発達がより必要な腹臥位よりも背臥位は新生児にとって運動のコントロールがしやすい姿勢と言えるでしょう。

また背臥位では、他の姿勢に比べ姿勢の安定性が供給されていることから、対象物に対する眼と手の協調に基づく上肢の到達運動コントロールを学習することが可能になります。

また、キッキングに代表されるように下肢筋の屈曲・伸展を繰り返す運動を通じて、下肢の運動コントロールを学んでいきます。

新生児はどう運動を学ぶのか

誕生当初は、ランダム、かつ空間・時間・力の側面でその運動のコントロールに秩序が見られない動きがみられますが、徐々にその精度が上がっていきます。

これら運動はジェネラルムーブメントと呼ばれています。

一方で、認知神経科学的側面から見れば、床面に対する体の接触を通じて触覚の過敏性を減少させることになります。

また、寝返りなどの姿勢変換を伴うことで知覚の変化を学習していきます。

さらに自分自身の手で足をつかんだりすることで、身体知覚の学習も引き起こしていくことになります。

これに加えて、対象物に対してそれらをじっと見る「注視」や目線で追いかける「追視」、そしてそれに対応した上肢の到達運動、さらには右手と左手を合わせる運動を通じて自己と物体との空間性や身体の正中線を学び、身体図式や空間認知に関わる大脳皮質や小脳の機能の発達を促していきます。

また、前方引き起こし運動などを通じて、フィードフォワード制御に基づいた予測的な運動の学習が促進されていきます。

このように考えると、ヒトの成長は本当に段階的に感じ学ぶことから始まっていくもので、非常に段階的なプロセスを歩んでいくということがいえるでしょう。

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