なぜ早食いは太るのか?―科学が解き明かす“満腹”のタイムラグとその影響

「早食いは太る原因になる」とよく耳にしますが、これは単なる迷信ではなく、実際に科学的な根拠がある話です。まず、人が食事を始めてから「お腹いっぱい」と脳が感じるまでには、一般的に20分ほどかかると言われています。これは、胃に食べ物が入り、その情報が血液中のホルモンや神経を通じて脳の満腹中枢に伝わるまでに時間がかかるからです。つまり、早く食べ終えてしまうと、まだ満腹感を感じていないのに「もっと食べたい」と思ってしまい、ついつい食べ過ぎてしまう可能性が高くなるんですね。

実際、いくつかの調査では、食べるスピードが速い人ほど肥満になりやすいという傾向が明らかになっています。たとえば、日本人を対象にしたある研究では、食事のスピードが「速い」と答えた人のBMI(体格指数)が、「ゆっくり」と答えた人に比べて有意に高いという結果が出ています。また、別の研究でも、食べる速度が速い人ほどメタボリックシンドロームのリスクが高まるという報告があります。こうしたデータからも、早食いが体重増加に結びつきやすいというのは、単なる感覚ではなく、事実として証明されていると言えます。

それに加えて、よく噛まずに食べると、食べ物が大きいまま胃に送られることになります。そうなると、胃腸への負担が大きくなり、消化不良を起こしやすくなります。さらに、満腹中枢が刺激されにくくなるため、「まだ食べ足りない」と感じてしまい、結果として食べ過ぎてしまうんですね。

一方で、食べ物をよく噛むことで、体にはさまざまな良い変化が起こることも分かっています。たとえば、1口につき30回ほど噛むことが推奨されていますが、これは単に消化を助けるだけでなく、ホルモンの分泌を促して血糖値の上昇を緩やかにする効果もあるんです。よく噛むと、小腸から分泌される「GLP-1」や「PYY」といったホルモンが増え、これらが脳に満腹感を伝える手助けをします。その結果、自然と食べる量が減っていきます。

また、噛むことで唾液の分泌が増え、口の中の細菌を洗い流す働きが強まり、虫歯や歯周病の予防にもつながります。さらには、よく噛む行為そのものが脳への刺激になり、記憶力や集中力の向上にも効果があるとされています。つまり、「よく噛んでゆっくり食べる」というシンプルな行動が、ダイエットにも健康維持にも良い影響を与えるということです。

早食いの習慣がある人にとって、ゆっくり食べるというのは最初は少し難しいかもしれません。ですが、例えば一口ごとに箸を置いてみたり、食材の味をじっくり感じながら食べたりすることで、自然と食べるスピードを落とすことができます。また、家族や友人と会話を楽しみながら食事するのも、早食いを防ぐ良い方法です。

つまり、早食いをやめてよく噛んで食べるというのは、肥満予防という面だけでなく、消化器官の健康、血糖値のコントロール、そして脳の活性化まで、全身に良い影響を与える習慣だと言えます。毎日の食事は、生きるためだけでなく、体を整える時間でもあります。ですから、その時間を大切にして、1回1回の食事を丁寧に味わうようにすると、自然と健康にもつながっていきますよ。

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