スポーツや生活の中では時として大きな力を出すことが必要です。
大きな力を出す際、身体を守るためにあえて力を抑制する仕組みがあります。
筋肉は関節をまたいで腱という組織で骨につながっており、筋肉で発生した力は腱によって骨に伝わります。
関節は筋肉の縮もうとする方向にその角度を変えようとしますが、それに抵抗してその動きとは逆に関節を動かそうとする力が加わると、筋肉が縮もうとする力を発揮しても関節はすぐには動きません。
これは、腱の中にあるゴルジ腱器官という感覚器官から信号が出て、その腱が傷つくかもしれないという信号が脊髄に伝わり、運動神経細胞からの筋肉に対する指令が弱まり、力の発揮が弱くなることで起こります。
この仕組みはゴルジ腱反射と呼ばれています。
この仕組みはケガの防止のためには大切ですが、大きな力を出す為には邪魔になります。
日々のトレーニングで繰り返し徐々に負荷をかけていくことで、この反射が勝手に働かないように身体をならしていくことが重要になります。
筋肉が力を発揮する源
筋肉が力を発揮する源は、筋原線維にあるミオシンのクロスブリッジがアクチンを引き込むことです。
筋肉ができるだけ大きな力を発揮するためには、このミオシンのクロスブリッジがアクチンを引き込む効率ができるだけ高くなればよいということになります。
筋肉の長さが短いときは、多くのアクチンがすでにミオシンに引き寄せられてしまっている状態です。
この状態からさらにアクチンを引き込むことはできません。
ですから筋肉の長さが短くなると大きな力を発揮することが難しくなります。
筋肉が引っ張られた状態では、ミオシンとアクチンが重なり合っていない部分があります。
するとクロスブリッジがアクチンを引き込むための作用を及ぼすことができません。
ですから、ミオシンがアクチンを引き込む効率も高いとは言えません。
ミオシンとアクチンの重なり具合からすると筋肉が短くも長くもなくミオシンのクロスブリッジの最大数がアクチンと重なり合ったちょうどよい長さの時に最も大きな力が出せるということになります。
筋肉の弾力性
筋肉が自分から力を発揮する仕組みだけ考えると短くも長くもなく中間の長さでもっとも大きな力を出せるということになりますが、筋肉には弾力性という性質があり、少し引きのばされるとそこからゴムのように元に戻ろうとする力が働きます。
この力が筋肉の能動的な活動による力に加わるともっとも大きな力が出せることになります。
多くのスポーツ動作は大きな力を発揮するために、このような筋肉が少し伸ばされた状態を作り出すテクニックが使われます。
スイング動作のバックスイングなどです。
動作においては主に使う筋肉をあらかじめ少し伸ばしておいて、そこから力を発揮すると強い力が発揮できるのです。