運動するときのエネルギー源について考えると、大きく分けて「ATP-CP系」「解糖系」「酸化系」の3つがあります。
ATP-CP系は容量が少ないので、大部分のエネルギーは解糖系と酸化系によって供給されています。
それぞれの利用量は、運動強度によって割合が変化しますが、運動強度が高ければより解糖系によるエネルギー供給が多くなり、運動強度が下がれば酸化系によるエネルギー供給が多くなります。
基本的には、持久系の運動は、運動強度が低く長時間続けるものなので、酸化系がメーンの供給源となります。
酸化系から解糖系へと移り変わる境目を「LT値」といい、乳酸がよく出始めるところだといわれています。
乳酸は、溜まると筋が酸性に傾くので、疲労物質の1つだと考えられてきましたが、近年では研究が進み、酸化系によって利用されるエネルギー物質であるという理解が進んでいます。
糖をエネルギーとして利用した産物として乳酸が出ますが、酸化系ではその乳酸を利用してエネルギーを産生しているのです。
糖を分解してエネルギーをつくるのと、これによってできた乳酸を利用して酸化系でエネルギーをつくるのとは、シーソーのようなバランスの下に成り立っています。
高い強度の運動は長くは続かないので、運動強度が下がってきたときに、糖分解で生まれた乳酸を利用して、今度は酸化系でエネルギーを産生するのです。
「LT値」より高い運動強度では、速筋線維がメーンで動員されるので、持久力というよりはパワー発揮能力にあたり、一方、「LT値」より低い運動強度では遅筋線維がメーンで動員されるので、持久力のことを指します。
しかし、パワーで速筋線維を使うときには、必ず遅筋線維から速筋線維の順番で動員されるので、どちらの筋線維も使われることになります。
多くのスポーツでは、低い運動強度を長時間続けるというよりも、高い運動強度をいかに長時間維持するかが重要になります。
糖の貯蔵量には上限があるので、糖を利用する運動強度を長い時間維持することはできません。
持久力を高めたいと考えるのであれば、なるべくLT値をより高い運動強度に押し上げることが必要です。
LT値を伸ばすようなトレーニングを行うことで、ミトコンドリアの量や毛細血管の密度、さらにはクレアチンの量が増えるので、結果的により糖が温存できて乳酸の産生量が減り、また、酸化系による乳酸の利用能力が高まることで、全体的に持久力が上がります。