感覚入力と内因性情報

運動出力は、筋を収縮させて、運動を生成する運動指令です。

これらの出力は、「感覚運動変換」を表現する回路へ感覚入力が入ることにより生じます。

感覚入力には、自分の身体に関する内因性の情報に加えて、外界の情報を示す外因性の情報も含まれます。

外因性情報、例えば目標の空間内での位置などですが、聴覚入力や視覚入力からもたらされます。

内因性情報には、身体に関するキネティクス情報とキネマティクス情報があります。

キネティクス情報には、手の位置、速度、加速度や、関節の角度や筋の長さなどがあり、身体が生成した力の情報とは、無関係となります。

これに対してキネティクス情報は、身体が生成した力や体験した力に関係しています。

各種の内因性情報は、異なるセンサーによってもたらされます。

例えば、筋長とその変化率についての情報がおもに筋紡錘からもたされるのに対して、生成している力について情報は、筋のゴルジ腱器官と皮膚の機械受容器からもたらされます。

腱反射などの単純な反射には単純な感覚運動変換が関与しており、脳の高次中枢が介在することなく、感覚入力が直接運動出力を引き起こします。

これに対して、随意運動には多段階の感覚運動変換が必要になります。

複数の情報処理中枢が関与することで、情報処理は単純化されていきます。

高次の中枢が一般的な目標を計画するのに対して、低次の中枢は、これらの目標をいかにして実現するかに専念するためです。

例えば文字を書くといった運動が普段と異なる方法で行われても、多かれ少なかれ同じような結果になるという事実は、こうした階層性によって説明できます。

同一人物の筆跡は、文字の大きさや、それを書くために用いた道具や身体部位に関係なく、よく似た構造を示します。

この現象は、運動等価性とよばれ、目的のある運動が、脳内で、特異的な関節の運動や筋収縮の集合としてではなく、抽象的に表現することで、さまざまな効果器を動かすことが可能になり、あらかじめ運動プログラムを用意しておくやり方では困難なレベルの柔軟性を付与することができます。

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