後十字靭帯損傷で、もっとも多い受傷転機は膝屈曲位にて下腿近位に直接打撃が加わって脛骨が後方におしやられるというもので、男子の接触型の受傷が多くなります。ラグビー・柔道・サッカーが好発種目になります。
症状は、不安定感とともに膝窩部に痛みを感じ、同部に圧痛があります。また、打撃を受ける下腿近位前面に挫傷や擦過創がしばしばみられます。
検査は、膝を立てた肢位でサギング徴候がみられ、後方引き出しテストが陽性となります。X線は骨折との鑑別、MRI検査は損傷部位や他の合併損傷の確認の為に必要となります。
治療は、スポーツによる後十字靭帯損傷は単独損傷が多いこともあり原則的には保存療法が加療されます。固定は、膝伸展位で1~4週行い、荷重は早期から許可されます。固定除去後は、自動可動域訓練と脛骨を前方に引き出す作用のある大腿四頭筋の強化訓練を行います。ハムストリングスのOKCエクササイズであるレッグカールは脛骨を後方に引くので治療中は積極的に行いません。疼痛・腫脹が消失し、関節可動域と大腿四頭筋の筋力が回復すればスポーツ復帰が許可されますが、受傷から1~3ヵ月程を要します。
後十字靭帯単独損傷に対しての保存療法の予後は比較的良好で軽度の不安定性が残っても大腿四頭筋の機能で代償されスポーツ続行可能な場合が多い。ただし、不定の膝の痛みは残り、長期的にみると二次的に膝蓋骨、大腿骨内側顆に変形性変化が生じてきます。