ビオチンの歴史とその働き

ビタミンは1910年に日本の鈴木梅太郎博士が脚気を研究している際に発見・分離されたもの(ビタミンB1)が最初であるとされています。
その頃は、オリザニンという名で、その2年後に分離に成功したポーランドのフンクがビタミンと名付け、それが今日まで使われています。
つまり、1910年から本格的にスタートしたビタミンの研究ですが、健康に大きな影響をもつ栄養素であることが理解されるにしたがって、その研究も加速していきました。
1920年代には、新しいビタミンを見つけようとする研究者たちがこの分野に溢れていたとされています。

ビタミンHとビオチンは化学構造が全く同じ。

当時の研究者たちはネズミの飼育と餌について、生卵の白身をネズミの餌に添加すると、毛が抜け落ちてしまい、皮膚はカサカサに荒れてくるということ、そして生卵ではなく、ゆで卵の白身あるいはキャベツをネズミに与えると、ネズミは正常に成長するということを知っていました。
つまり、キャベツにはネズミが正常に育つために必要な何かが含まれているというわけです。
この何かをドイツの化学者ジョルジ―はビタミンHと呼びました。
それから数年経った1936年、同じドイツの化学者ケーゲルは酵母を育てるのに必要な成分を探していたところ、これを卵の黄身から発見し、ビオチンと名づけました。
のちにアメリカの化学者デ・ワグナードがビタミンHとビオチンは化学構造が全く同じ、つまり、同一の物質であることに気づきました。

ビオチン不足により、脱毛、疲労感、うつなどに陥る。

しかし、ここで疑問が浮かび上がります。
なぜ生卵の白身を食べたネズミがビオチン欠乏症になったかということです。
それは、生卵の白身には、アビジンというビオチンに強く結合するタンパク質が入っており、このため、生卵の白身を食べると、アビジンがビオチンを捕捉してしまい、ビオチンがビタミンとして働くことができないのです。
それに対して、ゆで卵にすると、アビジンに熱がかかることで、形が変わってしまいビタミンを捕捉する能力を失ってしまうため、そうならなかったのです。
これらの研究から、ビオチンもまた健康に大きな影響をもつ栄養素であり、その不足により、脱毛、疲労感、うつなどに陥るとされています。
ビオチンの摂取には、レバー、牛乳、卵、豆類が良いとされています。

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