私たちが生活する環境には、年としての周期、春・夏・秋・冬の四季、月・週・日それぞれの周期、さらには昼夜の交代などがあります。
これらの周期の影響を受けて、一定のリズムをもった日常生活を営んでいます。
明暗によって睡眠と覚醒のリズムが形成され、さらに摂食のリズムも形成されます。
生体は、それらの生理的変動に対応することが明らかになっています。
このような変動は「生体リズム」と呼ばれ、個体レベルでは、臓器・組織から酵素・代謝物質レベルにおいても観察されています。
このような各種の生体リズムに対応した生活リズムがあり、特に栄養面からの食生活リズムは、生理的・代謝的機能を効率よく機能させていく上で、きわめて重要だといえます。
明暗・気温・湿度などの環境は24時間の周期で変動しており、生体機能のリズムはこれに伴って変動します。
これを「概日リズム(サーカディアンリズム)」といいます。
ヒトの日内リズムは、循環器系の機能は夕刻に、副腎機能・成長ホルモン、好中球細胞数は入眠直後にピークとなるように、それぞれの生理機能や代謝物濃度が異なる時刻に高まり、摂取した栄養素を合理的に体内利用しようとしています。
日内リズムを支配する環境因子として、昼夜による明暗リズムが重要ですが、栄養素の消化、吸収、代謝機能に対しては、摂食パターンが大切であると考えられています。
例えば、夜行性のラットはその80%を夜間に摂食しますが、その結果、種々の代謝活性も夜に高まります。
他にも、糖消化のために働く酵素のひとつであるスクラーゼの活性は、ある細胞においてですが、夜間に高く、昼に低い値を示します。
しかし、明暗の条件は変えずに昼に強制的に摂食させるとスクラーゼ活性のピークが逆転することがわかりました。
この逆転には1週間ほどかかるといわれており、ある程度はリズムの存続がなされることが伺えます。
同様の現象は、他の消化酵素やアミノ酸・グルコースの能動輸送能力にもみられ、たとえ絶食しても2~3日は既存のリズムが保たれることなど一種の適応現象といえます。
また、糖の代謝にかかわるコルチゾールというホルモンの血中濃度も、食事摂取時期に対応して日内リズムを形成しており、起床前に最も高いレベルを示します。
体温においても、一般的には早朝は最も低く、夕方最も高くなる日内リズムを示しますが、これも食事の摂取に同調することがわかっています。