心理物理学とウェーバーの法則

近代における感覚と知覚の研究は、19世紀に実験心理学が科学的学問分野として生まれるとともに始まりました。最初期の心理学者であるウェーバー、フェヒナー、ヘルムホルツ、ヴントらは感覚に焦点をあて、意識過程の実験的研究を行いました。彼らは、感覚は心を理解するための鍵であると信じました。そして彼らの発見は心理物理学および感覚生理学の分野を生み出すこととなります。

心理物理学とは

心理物理学は、ある刺激の物理的性質と感覚的経験のさまざまな性質との関係について記述するものです。
感覚生理学は刺激によって生じる神経への影響、すなわち刺激がどのように感覚受容器によって変換され、脳においてどのように処理されるかを調べます。心に関する初期の科学的研究では、色や味といった複雑なものではなく、大きさ、形、強度、速度、タイミングといった他の要因と分離することができ、また正確に測定することが可能な事象に焦点が当てられてきました。

ウェーバーとフェヒナーはヒトが強度の違う2つの刺激をどのように、またどのような場合に、区別できるのかを知るために基本的な実験の枠組みを開発しました。彼らは感覚強度を数式の形で定量化し、それによって刺激強度と感覚的弁別能力との関係を予測できるようになりました。そして1834年にウェーバーは強度の違いに対する感覚系の感度は刺激の絶対強度に依存することを示しました。

例えるならつまり、我々は1kgと2kgの重さの違いを容易に知覚できるが、50kgと51kgを区別することは難しいというものです。
この関係はウェーバーの法則として知られます。
これはΔS=K・Sという式によって表現されます。
ここで、ΔSは第1の刺激と第2の刺激との識別可能な刺激強度差の最小値を表し、Kは定数です。
ΔSは最小可知差異または弁別閾とよばれます。

ウェーバーの法則

これらはすなわち、第1の刺激と第2の刺激とを区別するのに必要な刺激強度は、第1の刺激の絶対強度に比例して増加するということを表しています。
フェヒナーはウェーバーの法則を発展させ、刺激強度Sと被験者が経験する感覚強度Iとの関係をI=Klog(S/S0)と表しました。
このフェヒナーの法則は発表後1世紀近く受け入れられてきましたが、感覚強度が刺激の各強度における最小可知差異の増加分の合計と等しいという彼の仮説は誤りであることが判明しています。

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