筋の収縮とそのエネルギー源の代謝

当たり前ではありますが、等尺性収縮の発揮筋力は、その持続時間に比例して低下します。
実際に最大随意収縮力は、6〜7secしか維持できません。
一方で、最大収縮のの75%では30〜35sec、50%では1min、25%では3.5hも収縮が可能になるともいわれています。
この相違は、筋収縮による筋への血流の低下あるいは遮断の程度を反映している、つまりは筋の代謝容量の低下で起こります。
同様に、筋疲労後の筋力回復過程も同じように、3minの休息で最大収縮力の80%、10〜11minで100%の回復が得られます。
ただし、等尺性収縮では、回復の時間は長くなり、10minで70%、40minで90%の回復になるとも報告されています。

運動強度が低いと脂肪から、運動強度が上昇すると糖質からのエネルギー利用が高まる。

体内には約180,000kcalのエネルギーが貯蔵されています。
その組成は、脂質77%、タンパク質22%、糖質1%といわれています。
この中でも、ただちに利用できるエネルギー源は糖質であり、筋グリコーゲンとして75%、肝グリコーゲンとして20%、細胞外液のグルコース5%です。
また、運動強度が低い時、筋収縮のエネルギーの多くは、脂肪から得られます。
運動強度が上昇すると、糖質の利用が高まります。
最大酸素摂取量50〜70%の運動強度になると、糖質が主なエネルギー源となり、85〜90%では糖質だけになるといわれています。
そして糖質、特に筋グリコーゲンの減少は、有酸素性運動ではSO線維で著しく、無酸素性運動ではFF線維が著しく減少します。

体内で筋は、直接のエネルギー源として、ATPとクレアチンリン酸(CP)を利用していることは有名です。
CPは、クレアチンキナーゼの触媒によって、ADPにリン酸を転移してATPを再合成します。
そしてここでいうCPは、体重あたりもっとも少ないエネルギー源になります。
一方で、筋グリコーゲンは量も多いですが、エネルギー放出の速さはCPの半分になります。
さらに再合成には、CPが30〜120min、グリコーゲンが60〜90minを要すると報告されています。
そのため連続した運動では、CPやグリコーゲンが減少し、その再合成は遅延してしまいます。

短時間の運動ではリン酸の不足、酸化物質の蓄積による解糖の障害が運動の制約条件となる。

運動を続けていくと、筋組織には乳酸が蓄積して筋疲労や収縮力の低下が起こります。
最大酸素摂取量の75〜80%の運動強度で、疲労するまで運動を続けると、筋グリコーゲンは完全になくなります。
この場合、運動ができなくなる、つまり筋グリコーゲンの有無が連続運動の主要な制約条件になっています。

また、筋グリコーゲン以外にも肝グリコーゲンもグルコースとなって筋に補給されます。
安静時、肝臓にはおよそ100gのグリコーゲンが蓄えられていますが、身体運動によって消耗すると、血中グルコース濃度を維持するように1〜2g/minの割合で肝臓のグリコーゲンが利用されます。
たとえな間欠的な運動では、酸素供給が可能であり、細胞呼吸によるATP再合成がなされます。
したがって、15〜20secの最大筋収縮でも、30secくらいの休息で良いとされています。

短時間の運動では、ATPとCPが主なエネルギー源になります。
短時間による等尺性最大収縮によってATPが20%、CPが約80%減少します。
この場合、筋グリコーゲンはあまり減少しませんが、乳酸蓄積による酸性は高くなります。
この場合には、ATPやグリコーゲンの不足ではなく、リン酸の不足、酸化物質の蓄積による解糖の障害が運動の制約条件となります。

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