「運動」と「痛み」の関係

様々なスポーツを行う中で「痛み」というものは、なかなか避けては通れないものです。
近年、様々な運動による鎮痛効果が報告されていて、たとえば磁気刺激等を用いて運動野を賦活させることによる疼痛緩和などが試みられています。

「一次運動野」や「運動前野」などの活動は疼痛関連領域を賦活することで疼痛を緩和させるのではないかとの報告があります。

実際には「痛み」と運動にはどのような関連性が報告されているのでしょうか?
研究報告を調べていると、「一次運動野」や「運動前野」などの活動は疼痛関連領域を賦活することで疼痛を緩和させるのではないかとの報告がありました。
一方で、麻痺や疼痛のために運動の実施が困難な方も多くいらっしゃいますが、このような方に対して実運動でなく視覚情報をもとにした運動イメージ想起による「鎮痛効果」を確認され、その際に運動時と類似した交感神経活動の賦活も認めると報告する論文もあります。
これらを考えると、「運動」と「痛み」の関係は実運動ではなく運動イメージの想起、いわゆる運動による神経系の活動と密接に関連していることが考えられます。

「筋感覚的」運動イメージ想起は、実運動に類似した運動関連脳領域の活動を示すことが報告されています。

運動イメージには、自分が運動をしているような「筋感覚(一人称)的」運動イメージと,他人や物体が動くのを見ているような「視覚(三人称)的」運動イメージに分類されます。
特に「筋感覚的」運動イメージ想起は、実運動に類似した運動関連脳領域の活動を示すことが報告されています。
したがって、運動野の活動が「鎮痛」に影響するのであれば、実運動を伴わない運動イメージ想起であっても「鎮痛」効果が得られることにもなり、特にその効果は「筋感覚的」運動イメージ想起の方が大きくなる可能性があるということです。
さらに他の研究に目をやると「筋感覚的」運動イメージ想起では、実運動同様に広範かつ持続的な「鎮痛」効果を示し、さらに交感神経活動の賦活も認めたという報告も出ています。
運動イメージの研究において、運動イメージ想起は「筋感覚的」、「視覚的」のいずれにおいても運動関連脳領域を賦活することがわかっていますが、より「筋感覚的」運動イメージの方が実運動に類似した脳部位が賦活することが報告されており、運動イメージ想起で「鎮痛」効果を得られるということを実証しています。

これらのことから、運動関連脳領域ならびに交感神経の活動・賦活は、運動による鎮痛メカニズムにおいて重要な因子であり、実運動だけでなく「筋感覚的」運動イメージによっても誘導されることから、「筋感覚的」運動イメージ想起は実際に運動するのと同様に鎮痛方法として高い有用性が期待できるということになります。

もちろん「痛み」を我慢してやるのが得かといえばそうではありませんが、痛みの対処法として一つに「筋感覚的」運動イメージ想起を行ってみるのもありなのかもしれませんね。

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