前腕部は筋が3つの区画に分かれていて、この区画内の内圧が上昇して、血行障害や神経障害をきたし、筋の機能不全を起こしたり、場合によっては筋壊死にいたるものもあります。
これをコンパートメント症候群と言います。
前腕コンパートメント症候群を発症するのは、ほとんど屈筋群コンパートメントです。
発生機序としては、骨折や打撲、組織の圧挫など外傷による筋内出血、浮腫により発症する急性型のものやウエイトトレーニング・オートバイレース・車椅子レース・剣道などの運動を続けたりすると発症する慢性型のもの、きつい包帯やギプスなどによる圧迫により発症するものがあります。
急性型では、内圧が上昇し、毛細血管に循環不全と透過性の亢進起こり、さらに内圧が上昇すると細動脈の閉鎖と組織間液が増量し、さらに内圧を上昇させ、筋や神経を不可逆的な変化に移行させます。
慢性型は、運動による筋容量の増大に対応して区画が拡大できない結果発症します。
原因として筋膜の肥厚が考えられ、長期間のトレーニングにより筋肥大が区画内の余地をすでに少なくしてしまっている可能性もあります。
症状としては、急性型は急速に症状が進行します。
初期症状としては、障害されたコンパートメントに一致した圧痛・自発痛・腫脹です。
特徴は障害されたコンパートメントの筋を他動的に伸展させると疼痛が増強することで、進行するとコンパートメントは硬く腫脹し、手指は屈曲位をとるようになり、感覚障害や運動麻痺が見られ水疱形成を見るものもあります。
治療としては、急性型は急速に進行するので、高挙および冷却し、内圧の上昇を極力防ぎ、至急医療機関に搬送しなければなりません。
包帯・ギプス装着時であれば、速やかに除去します。
慢性型は冷却し、安静を保持し、スポーツ活動を休止し、経過を観察し、再発するようであれば、医師に対診を依頼します。