運動指令(moter Command)と随伴発射(corollary discharge)

われわれは一般に一連の系列的動作を行いますが、系列内の運動の順序やどの筋をどのように動かすかということについては、前もってプランを構成していることが多いとされています。今回は発話、つまり言葉を発するという行為の運動がどう行われているかを考えてみます。

遠心性コピー(efference copy)とその随伴発射(corollary discharge)

発話は一連の系列よりなる熟練動作であるとされています。例えばみなさんが「おはようございます」という時、舌の位置や移動、口唇の開閉、声帯の振動、これらの運動の順序やタイミングについて、構成したプランにしたがって発話しているって考えたことありますでしょうか?正直ほとんどの人がそんなこと考えずに何気なく発話していると思います。

Hickok(2012)による研究の報告ではある音節を発音するプランを持った場合、レベルが異なる2つの感覚ターゲットとそれに到達するための2つの運動プログラムが働くと報告しています。その2つのプログラムは1つは当然ながら運動指令(motor command)が声道に、もう一つはその遠心性コピー(efference copy)あるいは、その随伴発射(corollary discharge)が内部モデルに送られるとしています。

内部モデルの2つのレベルの一つは「音節を構成する音素のレベル」、もう一つの高次のものは「音節のレベル」です。それぞれのレベルで別個の運動プログラムが実行されることになりますが、前者のターゲットは声道に絡む体性感覚的なものであり、後者のターゲットは聴覚的なものになります。1連の運動を行うにも様々な効果器が効率よくかつ効果的に調整される必要が求められるということです。

前向性の予測(forward prediction)と逆向性の修正(inverse correction)

この時の運動プログラムからターゲットへは前向性の予測(forward prediction)を、ターゲットから運動プログラムへは逆向性の修正(inverse correction)を行っていると考えられています。このことからも推測できるように、運動プログラムから感覚ターゲットへは抑制的な結合を行っているのではとしており、発音の誤りの修正や結合発話などでの有効性を論じている研究になります。つまり運動指令(moter Command)がターゲットの効果器に伝達されるとまさにその時にその遠心性コピー(efference copy)がその指令に随伴するようにその運動指令に必要な内部モデルの調整を促すように送られているということが考えられます。これは今回は「発話」の研究にはなりますが、実際の運動においても言えることなのかもしれません。効果器をターゲットとした運動指令、いわゆる体制感覚に対する指令と、その調整を無意識的に行う感覚器をターゲットとした随伴発射があることは運動を制御する上でも非常に重要な要素なのかもしれません。

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