触ることは知ることだ。−ギブソンのアクティブタッチの本質とは−

私たちは、そこにあるモノが何かを知ろうとするときには、手や指を自由に動かし、それに触ることで判断しています。

アメリカの知覚心理学者ギブソンは、ただ触るだけではなく、そして触らされているわけでもなく、能動的に意識的に触っていることとそのときの運動に密な関係性を見出しそうした知覚システムをアクティブタッチと呼びました。

これを視覚や聴覚に置き換えてみると、意識して見ているものと単に見えているものは違い、耳をそばだてて聞いているものと単に聞こえているものは違うというものになります。

触覚の場合も、受け身的に手に刺激を与えられるのではなく、「これは何だ」と意識して触るのでは、当然、知覚できる情報の量も質も異なります。

つまりアクティブタッチは、より深く物事を知るための触知行動なのです。

アクティブタッチはそうした特徴から「身体で覚える」や「身につく」という感覚へと結びついてると言われています。

たとえば、折り鶴を折り方を覚えるという行為を、説明書を読んで覚えるという場合と、実際に折って覚えるという場合を比べてみます。

前者では、二次元的に図を記憶するだけですが、後者は、折り紙の手触りや紙の擦れる音、折り目をつけるための力の入れ具合などさまざまな感覚を伴って、最終的に折り鶴が出来上がります。

こうして覚えたときにできる折り鶴という概念は、運動感覚をはじめとするさまざまな感覚が複合的に入り混じっているため、それだけ記憶の構造も多様になります。

その結果、その折り方を思い出すときには、指も動きを覚えており、再生しやすくなるのです。

このようにして、身体内部の感覚が使われるような分かり方をしてこそ、「身体で覚える」ことになり、「身につく」といえるのではないでしょうか。

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