人間が人間らしく生きるための装置「前頭葉」

脳の中でも「前頭葉」は意欲や意思決定、行動に対する抑制といった人間が人間らしく生きるための機能が詰まってます。実のところ、猿と人間の大きな違いもここにあるといわれています。では前頭葉の働きとはどのようなものなのでしょうか。

意欲低下、判断力低下、暴力・反社会的行動

前頭葉の障害では意欲低下、判断力低下、暴力・反社会的行動が生じます。前頭葉は部位によって下記のように機能が分けられます。

眼窩前頭皮質(OFC:Orbirofrontal Cortex):情的ー感情に関わり情動に影響を及ぼす。
背外側前頭前皮質(DLPFC:Dorsalateral Prefrontal Cortex):認知処理過程に関わり計画を立てるなどの機能に影響を及ぼす。
内側前頭前皮質(MPFC:Medial Prefrontal Cortex):自動活性化に関わり自発的な行動に影響を及ぼす。

これらが総合的に働くことで目標に向けられた行動を起こすことがわかっています。

OFC(情動) → DLPFC(計画)→ MPFC(自発的行動)

これらが障害されるとやる気が出ず計画性がなく自分で動こうとしない「アパシー」といわれる独特の症状が出現することになります。

このアパシー。うつの症状に似ているのだがうつは将来の不安があり、落ち込みとともに意欲が減少するのに対し、アパシーは将来に対して無関心で落ち込みなく行動が低下するのが特徴です。

アイデンティティーに影響を与える前頭葉

またもう一つ特徴的な症状として暴力・反社会的行動が挙げられます。他者への攻撃としては2種類あり、直接暴力を加える敵対的攻撃ー反応的(reactive)なものと道具的攻撃ーあらかじめ準備(proactive)に分けられます。道具に当たるような攻撃では脳ではあらかじめ準備が行われており反応的ではないとされていますが、直接暴力を加える反応的なものは特に準備はなく無計画で行われるとされています。これには情動に関わる眼窩前頭皮質の影響が報告されています。

人間らしさ、アイデンティティーに影響を与える前頭葉。
その働きにより人間は多くのものを作り出し、現在まで発展してきたと言っても過言ではないのです。人が自己中心的な行動のみに走らずに人との協調をとりながら社会を形成したのも、この前頭葉の働きは大きいということがいえるでしょう。

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