脂質の代謝には脂肪分解酵素(リパーゼ)が働きますが、運動に関連して、脂肪組織の中性脂肪に働く「ホルモン感受性リパーゼ」と、タンパク質と結合して血中に存在する脂質(リポタンパク)に働く「リポタンパクリパーゼ」があります。
持久性の運動をしている時などに糖質のエネルギー源が不足してくると、脂肪組織中に存在する中性脂肪はホルモン感受性リパーゼの作用によって分解されて、血中に遊離脂肪酸が放出されます。
この遊離脂肪酸のほとんどは筋肉や心臓などの組織に運ばれ、エネルギー源として利用され、残りは肝臓へと運ばれます。
肝臓に取り込まれた脂肪酸は再び中性脂肪に合成され、超低比重リポタンパクとして血中に放出されます。
運動を行うことによって、リポタンパクリパーゼの活性も高まることが知られていますが、血中のリポタンパクは末梢血管壁に局在しているリポタンパクリパーゼによって分解され、その結果生み出された遊離脂肪酸は筋肉や心臓などの組織に運ばれてエネルギー源として利用されて、残りは肝臓へと運ばれます。
このように運動時には脂質がエネルギー源として使われるので、血中のコレステロールやリポタンパクなどの中性脂肪が高い状態にある高脂肪症の患者には運動療法が用いられます。
運動中のエネルギー源は主に糖質と脂質ですが、比較的運動強度の低い有酸素運動を行っている時には、脂質をエネルギー源として使う割合が高くなります。
したがって、運動療法を行う際には、有酸素運動運動が適していると考えらます。
リポタンパクリパーゼの活性が高まることで増加するHDL-コレステロールは、コレステロールを末梢から肝臓へと運ぶ働きがあるので、これによって血中のコレステロール値が低下します。