筋力の生理学的限界と心理的限界

人の最大筋力を決定するものは、筋の横断面積という構造的要素と筋を支配する運動単位の興奮状態という機能的要素とがあります。これら構造的要素によって決まる筋力の上限を生理学的限界と呼び、機能的要素によって決まる筋力の上限を心理的限界と呼びます。

火事場の馬鹿力というパワー

前者はより身体構造に左右されるものであり、後者はより神経活動に影響されます。心理的限界との限界の意味は、自分の頭の中で限界と思い制御してしまうという意味ではなく、限度とする範囲のことであり、心理的限界はその時の条件によって変化します。

例えば、火事場の馬鹿力と言われるように、人間は特殊な状況下、あるいは異常な精神的興奮が引き起こされたとき予想もつかない力を発揮できると言われています。オリンピックのような大舞台で予期しなかった記録が出るのはその良い例でしょう。

上位中枢が無意識のうちに抑制を和らげる

また、自ら掛け声を発しつつ筋力を発揮したり、催眠によって勇気づけられたり、ピストル音を聞かせられるなどすると筋力の値が約30%も上昇するという報告もあります。これは、心理的限界が生理学的限界に接近したことによるものと説明されますが、つまり上位中枢が無意識のうちに抑制を和らげ、大脳の興奮水準が高まったことによるという考えとなります。これはまた、意欲や集中力が運動の効果を上げる要因となることを示唆しています。

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