神経・筋に対する温度の影響

神経伝導速度は、組織温度が1℃上昇するごとに約2m/秒速くなります。
この神経伝導速度の変化は、無髄神経線維よりも有髄神経線維が、また、大径線維よりも小径線維が大きく、痛みを伝える求心性神経で考えると、小径の有髄線維であるAδ線維が、無髄線維であるC線維よりも温度変化の影響を受けやすいといえます。

冷却すると伝導速度が低下するため、急性痛に対しては寒冷療法が推奨される。

急性痛の一種である一次痛は、Aδ線維を経由して中枢に伝達されますが、温熱刺激はこの線維の伝導速度を早めることになり、痛みの増悪につながる可能性もあります。
これとは反対に、冷却すると伝導速度が低下するため、急性痛に対しては寒冷療法が推奨されます。
筋への影響として、臨床的には、局所や全身の加温により緊張性収縮による筋のスパズムが軽減し、筋のリラクゼーションが得られることがしばしば起こります。
筋音が42℃になると、筋紡錘からの求心性線維であるIa線維とゴルジ腱器官からのIb線維の活動が増加すると言われています。

温熱刺激によって、痙縮筋の筋放電の減少や脊髄前角細胞の興奮性を表すとされるH波、F波の振幅の減少する。

逆に筋紡錘二次終末からの求心性線維であるII群線維や、錘内筋線維への遠心性神経であるγ運動神経の活動を減少します。
これらの神経線維の影響の中で、Ib線維の活動増加やγ線維の活動低下は当該筋のα線維の活動低下を招きますが、これは加温による筋のリラクゼーション効果に一部関与していると考えられています。
さらに、筋を加温すると粘性が低下し、弾性は増加すると言われており、筋は他動的伸張に対する抵抗性が減少します。
実際に、温熱刺激によって、痙縮筋の筋放電の減少や脊髄前角細胞の興奮性を表すとされるH波、F波の振幅の減少が確認されています。

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