インナーコアの重要性と姿勢制御

「インナーコア」というものをご存知でしょうか?
「インナーコア」はいわゆる横隔膜、骨盤底筋、腹横筋、多裂筋、胸腰筋膜で構成されている体幹深部に位置している筋群からなるものの総称をいいます。
場合によっては頸部筋まで含めることもありますが、ここではコアとありますので、体幹深部ということにしておきます。

「コア」という表現は、「身体の中心部の筋に対して私たちが付けた名称である頭部、頸部、肋骨、脊柱、骨盤をコントロールしている筋がそれである」。


体幹の「インナーコア」とありますが、この「コア(core)」という表現は、「身体の中心部分」という意味で考えるのがいいかと思います。そもそも「コア」という表現は、「身体の中心部の筋に対して私たちが付けた名称である頭部、頸部、肋骨、脊柱、骨盤をコントロールしている筋がそれである」とし、コアの動作への関与についても「動的に安定していればパフォーマンスは効率的になり、エクササイズも経済的かつ安全に行うことができる」と述べられています。

つまりこのインナーコアが働くということは、体の中心でシリンダーのように位置しているインナーコアが収縮することにより、腹腔内圧(IAP)が高まり、結果として体の中心部である近位が安定し、その結果として遠位の可動性が向上するということになります。このように考えると、体の四肢が自由に機能的に動くためにはこの「インナーコア」が機能していることがとても重要になってくるのです。

「インナーコア」が機能的かどうかの判断基準であり、「収縮の強さ」ではなくインナーコアの「収縮の速さ」によって決まります。


この「インナーコア」の機能は、ヒトの発達の過程で最初に獲得する機能の一つであり、これらの筋は随意的にコントロールするというよりは、反射により自動的に収縮することになります。評価として重要なのは「インナーコア」が機能的かどうかの判断基準であり、「収縮の強さ」ではなくインナーコアの「収縮の速さ」によって決まります。「インナーコア」の収縮のタイミングが遅いと、「アウターコア」といわれる表層筋群が先に収縮してしまい、結果として非効率的な動きを生み何らかの障害に発展する可能性が示唆されています。

実際に重量物の挙上などの際には、脊椎に伸展モーメントが加わり、そのモーメントに比例して不随意的に腹腔内圧の上昇がみられます。この「腹腔内圧の安定化」には、「インナーコア」の収縮の微調整が必要とされています。「腹腔内圧の上昇に必要なインナーマッスルが動作に先行して、あるいは同時に収縮すること」は重量挙げなどの特殊な環境下だけではなく、日常における様々な活動において不可欠な反応になります。

予測的姿勢制御(姿勢保持機構)は必ずしも「インナーコア」の作用だけで起こっているものではないということを忘れてはいけません。


日常生活で、例えば腕を前方に拳上する前にも腹横筋の活動や腹腔内圧の上昇が認められています。例えば手を挙げる、もも上げをするといった単純動作でも、その動作に先行して体幹を安定させておかないと、「腕は安定して挙がらない、体幹がのけ反る」ということが起こってしまうかもしれません。この様に「随意運動を開始する前に姿勢の変化を予測し、事前に姿勢制御のフィードフォーワード機構が発現すること」を『予測的姿勢制御』と呼んだり、『先行随伴性姿勢調節』と呼んだりしています。

この姿勢制御が無意識に働くことが「インナーコア」の理想的な働きと言えるでしょう。そして、これだけ「インナーコア」が重要であると言っていますが、予測的姿勢制御(姿勢保持機構)は必ずしも「インナーコア」の作用だけで起こっているものではないということを忘れてはいけません。初期のトレーニング指導では意識的に「インナーコア」を選択的に収縮するようなトレーニングを行うことは運動学習するうえでも重要ですが、実際の運動局面においては、この姿勢保持機構は動作に先行して起こる、「インナーコア」によるものだけではなく、「アウターコア」「インナーコア」も含めた様々な部位の筋収縮によるものになります。
自然な動きとしては、「インナーコア」と「アウターコア」が同調して働くことが重要であるということが大前提になるということを忘れないようにしましょう。

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