皮膚の構造とその機能

成人における皮膚の表面積は約2平方メートルで、その重量は体重の約16%にもなると言われていることから、人体最大の臓器とともいわれており、体外と外界を隔て、外界に直接さらされるという特徴を持つ器官になります。皮膚の機能には①外からの刺激に対する保護作用、②感覚器としての役割、③水分の喪失や透過、④体温調節、⑤創傷治癒作用などがあり、いずれも生命維持には不可欠な機能になります。

皮膚の構造

表皮の厚さは平均して約0.2mmであり、構成する細胞の95%はケラチノサイト(角化細胞)です。このケラチノサイトは、表皮の最深部で分裂し、成熟に伴い表層へ移行していきます。そのため、表皮はこのケラチノサイトの形態の違いによって、その表層から角質層、顆粒層、有棘層、基底層の4つの層に区分されます。具体的には、角質層は内部をケラチンで満たされた核のない扁平な死んだ細胞が重層化していて、顆粒層は2~3層のケラチノサイトからなりますが、核や細胞小器官は崩壊し、細胞の内容物であるセラミドなどの脂質は細胞外に放出され、その間隙を満たし透過バリアとして機能しています。

有棘層では接着斑を有する棘状の細胞突起が出現しており、これにより細胞同士が強固に結びついています。最深部の基底層ではケラチノサイトは幹細胞として誕生し、分裂・増殖を盛んに繰り返すことで上層の有棘層に押し上げられます。このように、表皮には細胞とその間隙を満たす脂質が存在するのみで、コラーゲン線維などの結合組織の構成成分は存在しません。これが皮膚の一番外層になる表皮の構造になります。

表皮の幹細胞

ヒトの細胞の中にには、いつまでも、分裂をつづけることができる細胞があります。それは「組織幹細胞あるいは幹細胞」と呼ばれる細胞です。幹細胞は、ある程度は特殊化がすすんでいるのですが、最終的な機能や形に達していない状態の細胞で、生涯にわたって分裂できる細胞をいいます。このような幹細胞が、骨髄や眼の網膜、神経など、いろいろな組織や器官で次々と発見されています。細胞は寿命や思わぬ外因によって死んで消滅します。

幹細胞は、分裂することで新しい細胞を生み出し、死んだ細胞のかわりとなる細胞を組織や器官に供給します。たとえば、皮膚の表面があかとなってはがれ落ちてもなくなってしまわないのは、皮膚の表皮の幹細胞のおかげです。皮膚は、表面から順番に、表皮、真皮、皮下組織の3層に分けることができますが、このうち表皮の幹細胞は、表皮の最下層の基底層にあります。もし表皮の細胞が死ぬばかりで新しくうつくられないとしたら、表皮はなくなってしまいます。皮膚の表面は、表皮の幹細胞が分裂して新しい細胞を生み出しているため、なくならずにすむのです。

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