スティフネスによる偽物の安定性

代償動作とは、足が怪我しているときにつく杖のようなもので、脳によって自動的に作られます。

代償は、制限されている運動を遂行する際に安定性をもたらしますが、結果的に良好でかつ再現性の高い運動の発揮を阻害してしまいます。

このような場合、筋にスティフネスとタイトネスをもたらしてしまいます。

ローカル筋による安定性が必要な場合にグローバル筋が活動してしまうケースはその最たる例かもしれません。

このときに起きた筋の緊張や硬さは障害が原因ではなく、習慣的になった「くせ」や誤った動作パターン、フォームやアライメントの不良など協調性の悪い状態で繰り返し運動を行った結果であるといえます。

良好でかつ再現性の高い運動の発揮が行えないと、身体はスティフネスやタイトネスに頼るようになり、結果としてそれがその人の身体特性になってしまいます。

組織伸張性の低下や筋緊張の増加、関節の退行変性、全身のスティフネスは、安定性低下の副産物であるといえます。

これらによって自然と制限が形成され、正常な感覚と運動の相互関係がうまく構築できなくなってしまいます。

この状態での力学的な健全性・安定性は高まるかもしれませんが、これには限界があります。

つまり、スティフネスは安定性そのものではないからです。

ここで発生しているスティフネスは、本物の安定性ではないため、環境への適応能力が欠けています。

したがって、可動性の問題はその裏に潜んだ安定性の問題の結果といえます。

この場合、可動性の問題を修正すると、安定性の問題が姿を現すため、まず可動性の改善と安定性の修正に対する反応を観察するとよいとされています。

したがって、原因が何であれ、まずは可動性の制限を可能な限り解消することが重要になってきます。

その後に安定性を再学習するための環境を用意します。

その過程には数日から数カ月を要することもありますが、手順通りに可動性を改善させてから安定性のトレーニングに移行することを常に正しく行うことにより、可動性の修正の効果や感覚入力が改善していくことになります。

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