心筋と活性酸素

培養した心筋細胞に、交感神経の神経伝達物質ノルアドレナリンをある濃度で添加すると、交感神経が亢進した場合と同様に、心筋細胞における拍動がより明らかな、はっきりとしたものになることが観察されます。
心筋細胞が一見、いかにも元気になったように思えますが、ノルアドレナリン濃度を増加させて長期間培養すると、逆に活動性は徐々に低下していきます。
しばらくすると心筋細胞は徐々に死んでいってしまいます。
このときの心筋細胞の内部の状況を観察すると、活性酸素の産生が明らかに増加していることが分かります。

活性酸素とは

活性酸素とは、老化や寿命に深く関わる因子であり、DNAを傷つけて異常な細胞を生み出すことで、細胞のがん化の原因となっているとも考えられます。細胞内で活性酸素が発生する仕組みは、一般的に次のようなものがあります。ATPの産生過程にミトコンドリア内膜に存在する電子伝達系を介す反応がありますが、電子伝達系では電子の受け渡しをしながらATPを作りだすため、ATPの産生が盛んになればなるほど、電子のやりとりが多くなります。

活性酸素を消去するシステム

電子は化学的に非常に不安定な物質であり、さまざまな分子と反応を起こします。中でも酸素と反応したときに活性酸素が産生されやすくなります。
ミトコンドリアが酸素を消費してATPをたくさん作れば作るほど、活性酸素ができる確率も高くなります。
細胞が含有しているミトコンドリア量は、細胞の種類によって著しく異なっており、仕事量が多い細胞ほどミトコンドリア含有量も多くなります。
心臓は重労働を受け持つ臓器であり、それを構成する心筋細胞はミトコンドリア含量が酸素消費量が多いため、活性酸素の産生料もまた、非常に多くなります。
しかし、ミトコンドリア含量が多い細胞には活性酸素を消去するシステムが備わっており、代表的なものには、スーパーオキシドジスムターゼ、カタラーゼ、ペルオキシダーゼなどの活性酸素除去酵素があります。
これらが働いて活性酸素という毒を解毒していくわけです。

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